防風や防砂のために人工的に植えられたマツの木
海岸に松林が多いのは、防風や防砂のために人工的に植えられたマツの木が林になったと考えられます。
海岸からの潮風は塩分を多く含むため、人間の生活に影響を与えます。
潮害によって農作物などは大きな被害を受けます。
この潮風を避けるために、松林は人工的に作られてきたという経緯があります。
海岸林として望ましい性質を揃えていたクロマツ
海岸で松林を形成しているマツの殆どはクロマツです。
日本の代表的なマツといえば、マツタケのできるアカマツと、この海岸に育っているクロマツです。
クロマツは潮風や防風にも耐え、飛砂に対しても耐性が高く、海岸のような養分の少ない場所や海の水が浸入し、地下水位が高くなっている場所でも育つことのできる能力のため、人工的に植林されたと考えられます。
日本の「白砂青松」の風景は、このクロマツの性質を利用した、人工的な景観だというわけなんですね。
海岸に松林をつくるためには人工的な砂丘が必要
海岸に松林を作るためには人工的に造成した砂丘が必要です。
海岸は常に風が吹いていて、折角マツを植えたとしても、マツが育つために必要な「土壌」が風で移動させられ安定しない為、生きていくことができないためです。
これを防ぐためには、松を植林するより前で、海岸よりも離れている場所に、「砂丘」を儲けることが必要です。
まずはこの砂丘を造成し、防風対策としたのち、その背後に植林できる場所をつくり松を植えるという方法により、松林が成立していったと考えられます。
クロマツ以外にも海岸林に適当な樹木
海岸林としてもっとも適当な樹種としてクロマツが選択された結果、日本の海岸林としての多くはクロマツの松林となっているわけですが、その他にも適している樹木はあります。
例えば以下のような樹種は、やせ地にも耐え、耐風性や耐潮性も高く、海岸林として適しているとされています。
- アカマツ
- ネムノキ
- ニセアカシア
- アキグミ
- ミズナラ
ただしこの中で「ニセアカシア」については、侵略的な外来種とされ、駆除対象となっているので、植えないほうが無難でしょう。
マツノザイセンチュウにより大きなダメージを受けている松林
このようにして人工的に造成されて、人々の生活を守って来た松林ですが、昭和40年代になると「マツノザイセンチュウ」によりダメージを受け、松林が枯れ、枯れた松林の中にその他の樹種が侵入している様子が多くなってきています。
ここでは少しマツノザイセンチュウについてもふれておこうと思います。
マツノザイセンチュウを運搬するマツノマダラカミキリ
マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリというカミキリムシと共生状態にあります。
マツノマダラカミキリは幼虫-蛹の状態でマツの中で生育し、5月下旬から7月にかけマツの表面に、直径5mmほどの穴をあけ成虫となり飛翔します。
成虫となったマツノマダラカミキリは、他の健康な1年生から3年生のマツの枝を後食します。
このとき、マツノマダラカミキリにはマツノザイセンチュウが寄生していて、マツノマダラカミキリから松の中へと移動し、マツは「マツノガザイセンチュウ病」にかかります。
マツノザイセンチュウ病にかかった松の木は、急激な生理的な異変をおこし枯死してしまいます。
マツノザイセンチュウについては、あらためてもう少し詳しく紹介しようと思います。