秋になると樹木が紅葉したり黄色くなったりするのはなぜ?
秋になると樹木が紅葉したり黄色くなったりするのはなぜって思った方も多くいらっしゃると思います。
このページでは、どうして樹木は紅葉したり黄葉したりするのか、紅葉や黄葉のしくみとともに紹介していきたいと思います。
葉っぱはどうして緑色に見える?
紅葉は黄葉を考えるまえに、樹木はなぜ緑色の葉っぱをもっているのか考えてみましょう。
小学校のころ、「樹木には葉緑素があるから葉っぱが緑色に見えるんだよ」って習ったことがあるかもしれません。
そして「葉緑素で光合成をして樹木は栄養を作ているんだよ」とも習ったかもしれません。
では、どうして葉緑素がある葉っぱは緑色に見えるのでしょうか。
葉っぱが緑色に見える葉緑素とは
葉緑素とは樹木の葉っぱの細胞内に存在する葉緑体に含まれる色素でクロロフィルとも呼ばれます。
この葉緑素は太陽の光を吸収して、樹木が成長するためのエネルギーに変えます。
このエネルギーを生み出す作用が光合成です。
太陽の光は、「光の三原色」で知られているとおり、「赤、青、緑」から主になっていますが、葉緑素によりこれらの「赤、青」の光が葉っぱの中に取り込まれます。
緑色の光は葉っぱに吸収されないで反射するため、樹木の葉っぱは緑色に見えるということになります。
クロロフィルにはa,b,c,dそしてfまである
一概にクロロフィルといっても、実はクロロフィルにはa~fまであることが研究されています。
もっとも陸上にある樹木にあるのはクロロフィルaとbです。
クロロフィルa,b,c,d,fがあるのは水中にある藻や海藻類などであり、樹木が進化して陸上にあがる過程で、効率的に光合成をすることができる、クロロフィルaとクロロフィルbが選択されたとされています。
以下、研究論文の概要から紹介します。
クロロフィルaとbの組み合わせは相補的に働き、強い光から弱い光まで上手く利用することができるのに対して、水中の生物のみが利用するクロロフィルcやdは、陸上の太陽光スペクトルにはうまく適応していないことがわかりました。つまり、陸上植物は、地上の光環境に適したクロロフィルaとbの組み合わせだけを利用するようになったのです。
クロロフィルの濃度の変化により葉っぱが紅葉して見えるようになる
では、なぜ葉っぱを緑色の見せているクロロフィルが赤色に見えるようになるうのでしょう。
実は葉っぱが赤く見えるようになるのは、葉っぱの緑色のクロロフィルが赤く染まっていくことに原因があります。
どうして秋になるとクロロフィルが赤く染まっていくのか、次の項から説明していこうと思います。
秋になるとクロロフィルが赤く染まっていく過程
秋になると葉っぱにあったクロロフィルが赤く染まっていきます。
どのような過程を経て、クロロフィルが赤く染まっていくのか、紹介していきます。
秋になると活動を抑えるため「離層」ができる
秋になると気温が下がり、太陽エネルギーも少なくなるため、植物は休眠の準備をはじめます。
この休眠の準備のひとつに「離層」の形成があります。
離層とは葉っぱと枝との間にできるバリアのようなものです。
このバリアを作ることで、夏の間に盛んにおこなわれていた光合成や呼吸活動を低下させて、消費するエネルギーを節約しようとするためです。
離層によって葉っぱに残されてしまったデンプンは、分解されてブドウ糖に変化します。
このブドウ糖と葉っぱの細胞の中に残されていた「アントシアニジン」という物質が結合して、「クリサンテミン」という赤色のアントシアニン系色素が作られます。
これに加えて、葉に残っていたクロロフィルも分解されて、赤色が目立つようになります。
これが紅葉ということなんですね。
クロロフィルが分解される過程については、日本植物学会でわかりやすく説明されていましたので、引用して紹介します。
秋になって気温の低下と共に、葉が老化して葉緑体の機能(特に二酸化炭素固定能力)が低下し、これに太陽光が照射されると葉緑体に活性酸素が生じやすく、この活性酸素はクロロフィールを分解しやすいため、先にクロロフィールが消失します(秋に低温と快晴が続くと紅葉が鮮やかになる原因)。
引用元:日本植物整理学会
また、なぜアントシアニンが生成されるかについてはよくわからないとされています。
一般的にいわれているのは、秋になって光合成活動が弱くなった際に、強すぎる太陽光を、アントシアニンで紫外線を吸収し、強すぎる光をやわらげているのだとされています。
イチョウの葉っぱはなぜ黄色に染まるのか
イチョウのように葉が黄色に染まる樹木は、紅葉の場合と少ししくみがちがいます。
モミジの場合は上で説明したように、赤色に見えるアントシアニンが生成されることで赤く見えるようになります。
しかし黄色く染まる葉っぱの場合は、もともと葉にあった黄色の色素が目立つようになるため、黄色に染まったように見えることになります。
黄葉する過程を図でみてみよう
樹木の葉っぱの色素には、もともと緑色のクロロフィルと黄色のカロテノイドという色素があります。
秋になると、「離層」により水分や養分の供給ができなくなり、葉のクロロフィルが分解されます。
この結果黄色の色素のカロテノイドが目立つようになり、葉っぱが黄色く見えるということになります。
その結果、きれいな黄葉が見られるというわけなんですね。
秋になると樹木が紅葉したり黄色くなったりするわけのまとめ
- 葉っぱが緑色に見えるのは「クロロフィル」という緑色の色素のためである。
- クロロフィルには、a,b,c,d,fなどの種類があるが、陸上の生物が持つクロロフィルはaとbである。
- クロロフィルのほかに、葉っぱには黄色く見える「カロテノイド」という成分が含まれている。
- 葉っぱが紅葉して赤く見えるのは、秋になるとアントシアニンという赤色系の色素が生成されるためである。
- 一方葉が黄色く見えるのは、葉の緑色のクロロフィルが分解されて、黄色の成分だけが目立つようになるためである。