ラウンドアップの添加剤の毒性が主成分よりも毒性が強い!?
本文の表現
最近の研究から、製剤のラウンドアップの毒性は、その主成分であるグリホサートより100倍も強いと分かってきたが、なぜか安全性試験ではグリホサート単独の毒性しか調べていない。そのデータで残留基準値が決められているのだ。私たちの口に入るのはラウンドアップだから、毒性が100倍も変わるなら、基準値は必ずしも安全とはいえないだろう。
抗議文の内容
ラウンドアップに限らず、農薬の登録には製剤の試験も実施されております。散布時など、製剤そのものにばく露されることを想定した急性の毒性影響を調べ評価されています。一方で、残留レベルの毒性が対象となる長期の毒性は、有効成分、補助成分共に非常に低濃度であり相互作用の可能性が低いこと及び補助成分の多くは農薬専用ではない生活用品等に含まれる汎用品であることから、有効成分単独で試験が実施されています。こういった評価は、世界の各国当局共通の評価法です。
引用元:日産緑化が送付した抗議文
解説「ラウンドアップの毒性は主成分のグリホサートよりも強い!?」
本中で「最近の研究から、製剤のラウンドアップの毒性は、その主成分であるグリホサートより100倍も強いと分かってきた」という表現が出ています。
これは、ラウンドアップに含まれている界面活性剤の毒性についての表現と思われます。
ラウンドアップに含まれる界面活性剤の毒性についての最近の研究「英国ロビン・ メスネージ教授らの除草剤に含まれる界面活性剤に関する論文」においては、「1991年以前はグリホサートの毒性よりも強い界面活性剤が使用されていたが、1990年代半ば以降は100分の1の毒性の海綿活性剤に置き換えられている」とされています。
GBH製剤の断面で界面活性剤を特定し、それらの急性毒性作用を比較しました。Roundupの第1世代のポリエトキシル化アミン(POEA)界面活性剤(POE-タロウアミン)は、グリホサートよりも著しく毒性が高く、特に曝露量の多いアプリケーターの間で、人の健康に対するリスクの懸念が高まっています。1990年代半ば以降、第1世代のPOEAは、他のPOEA界面活性剤であるエトキシル化エーテルアミンに徐々に置き換えられ、非標的毒性効果が低くなりました。界面活性剤の毒性に関する長引く懸念は、プロポキシル化第四級アンモニウム界面活性剤の導入により、少なくとも部分的に欧州連合内で緩和されました。このクラスのPOEA界面活性剤は、水生生態系に対する毒性が約100分の1です。
この論文によれば、「完成品のラウンドアップは有効成分のグリホサートより100倍以上毒性が高いことがある」という記述は、英国メネージ教授らの「グリホサートベースの除草剤における界面活性剤共製剤に関する混乱への洞察」を読む限りは、誤りといえそうです。
ラウンドアップの発ガン性 について、株主や投資家へ説明した内部資料が興味深い
日本におけるラウンドアップの販売会社である日産化学(株)が、株主や投資家へむけてラウンドアップの発ガン性や安全性について、説明していた資料が公表されていました。
この資料は「ラウンドアップの発ガン性は大丈夫?」と思っている人には、かなり興味深い内容となっていますので、こちらも引用しながら紹介したいと思います。
資料はこちらからダウンロードできます。⇒説明資料ダウンロード
ラウンドアップの発ガン性についての世界中の公共機関が発信した歴史
この資料の中では、ラウンドアップについて、世界中の公共機関が発信した歴史について紹介されています。
この歴史をおおまかに記載すると次のとおりです。
- 2015年3月:IARC(国際がん研究期間)が、ラウンドアップの主成分であるグリホサートをグループ2A(※)に分類。
- 2016年5月:国連FAO/WHO合同残留農薬専門会議が、「ヒトに対する発ガン性リスクはかんがえにくい」と発表
- 2017年3月:欧州化学物質庁が、グリホサートは、発ガン性物質、変異原生物質あるいは生殖毒性と分類する基準には合致しない。
- 2017年7月:カリフォルニア州の「プロポジション65」に発がん物質として、グリホサートを追加
- 2018年8月:カリフォルニア州において、ラウンドアップの製造会社モンサントに対して、注意(警告)義務を怠ったとして賠償命令。
- 2019年4月:米国環境保護庁が、「グリホサートは発ガン性物質でないことを確認した」と発表。
- 2019年8月:米国環境保護庁は、カリフォルニア州の表示は誤った表示であるとして、表示を削除することを指導
(※)IARCにおけるグループの分類は以下のとおりです。
発ガン性の分類 | 物質の例 |
グループ1:ヒトに対する発ガン性がある | 加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージなど)、タバコ、アルコール飲料、紫外線など |
グループ2:ヒトに対して、おそらく発ガン性がある | グリホサート、赤身肉、熱い飲み物、アクリルアミドなど |
グループ3:ヒトに対して、発ガン性がある可能性がある | 伝統的なアジアの漬物、アロエペラ全体抽出物など |
これらの流れをみると、世界的な動きを見ると「最初はラウンドアップって発ガン性があると思われたけど、よ~く調べると発ガン性はないみたいよ」という結論に向けて動いているみたいですね。
あくまで、客観的に世界の流れを見ると、ということです。
ラウンドアップが世界で禁止の方向へ向かっているって本当?
インターネットなどで、よく「ラウンドアップは世界的に禁止の方向へ動いているのに、日本だけが積極的に販売している」みたいな記事を見ることがあるのですが、これについても客観的な現状が、紹介されていますので、抜粋して少し見やすくして紹介します。
(下表は右にスクロールできます>>)
エリア | 割合(%) |
---|---|
アフリカ | 2 |
アジア | 15 |
ヨーロッパ | 5 |
ラテンアメリカ・カリブ | 46 |
北アメリカ | 25 |
オセアニア | 7 |
ラウンドアップの禁止状況について、「ヨーロッパ各国で・・・」という枕詞が多く使われるのをよく見ますが、もともとヨーロッパにおけるラウンドアップの使用率(円グラフのグレー部分)はそれほど高くないことがわかります。