奇跡の植物「常緑キリンソウ」がセダムの弱点を克服した奇跡のメカニズムとは
前のページで屋上緑化の中でも最も過酷な環境である「薄層緑化」について触れました。
「薄層緑化」で注目を浴び、屋上緑化で盛んに使われたたセダムですが、栄光の日々は長く続きませんでした。
このセダムに変わって、俄然注目を浴びるようになったのが「常緑キリンソウ」なのです。
常緑キリンソウ はセダムの弱点を克服
乾燥に強いセダムは、「高温と乾燥には強い」という特徴がありましたが、「高温で多湿には弱い」という弱点がありました。
常緑キリンソウも多肉植物であり、セダムの仲間ですが、セダムの「高温で多湿には弱い」という弱点を克服したのです。
どうして常緑キリンソウはこのような過酷な環境でも生育することができるのか、奇跡的なメカニズムについて説明したいと思います。
ハイブリッドな性質を持つ 常緑キリンソウ
常緑キリンソウが「高温乾燥に強く、しかも高温多湿な環境でも元気に生育できる」という奇跡的な特徴は、常緑キリンソウの持つ「ハイブリッド」な性質によります。
セダムは「高温乾燥に強い」という性質を紹介しましたが、これは「乾燥状態になると気孔を占めて乾燥から身を守りながら、しかも光合成をすることができる」という、セダムの特性によります。
このような植物をCAM型植物といいます。
これに対して一般的な植物はC3植物といわれ、乾燥状態になったからといって、気孔を閉じて乾燥から身を守る性質はないため、乾燥状態が続くとどんどん体内の水分を放出し、体内の水分がなくなり枯れてしまいます。
ところが常緑キリンソウは、これらのふたつの性質を併せ持っています。
このような性質を持っている植物は他にはあまりありません。
常緑キリンソウは、乾燥している時はCAM型植物の性質を発揮し乾燥に耐え、湿潤状態になるとC3植物の特質を示し、過剰な水分を放出するのです。
この常緑キリンソウの「CAM型植物とC3植物の性質を併せ持つという『ハイブリッドな特質』」が、常緑キリンソウを奇跡の植物と言わしめているのです。
僅かな土で生育できる 常緑キリンソウ が屋上緑化で広く浸透をはじめた
このように紹介してくると、常緑キリンソウが屋上緑化に最適であることが、おのずと理解できると思います。
簡単にまとめると以下のようになります。
- 僅かな土で生育できるので、建物への負荷の少ない緑化が可能。
- 環境の変化に強いので、ローメンテナンスが可能
- 常緑なので、冬でも豊かな緑化空間形成が可能
これらの3つの特徴に加えて、実は常緑キリンソウには更にSDGs時代に求められる特別な「ある特徴」があるのです。