常緑キリンソウ がガイアの夜明けで紹介されました。
筆者は以前、屋上緑化の会社へ勤務していた際に、この「常緑キリンソウ」という植物に関わったことがあります。
ガイアの夜明けの中で紹介されていた藤田さんとは、今でも時々連絡を取らせていただいています。
ただ、番組の中で「奇跡の植物」として紹介された常緑キリンソウですが、「どのあたりが奇跡なの?」と思った方も多かったのでは?
今回は常緑キリンソウの「どのあたりが奇跡の植物なのか」もう少し掘り下げて、さらに雑草対策としての常緑キリンソウについても紹介します。
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常緑キリンソウ とは
キリンソウ(←常緑キリンソウではなく只のキリンソウのことです。)は、日本の海岸などで一般的に見られる在来のベンケイソウ科の植物です。
名前の通り弁慶のように非常に強いことから付けられた多肉植物です。従来のキリンソウは日本各地の山地や海岸の乾いた岩の上などに自生する植物で、冬季は落葉します。常緑キリンソウは品種改良を行い、通年を常緑で保つように改良した新品種です。雨水が当たる所であれば、3㎝~5㎝程度の薄層の土壌で、生育温度-30℃~+40度と日本全国どの様な条件下でも生育が可能です。
この「キリンソウ」と違い、「常緑キリンソウ」は、特許を得た奇跡の植物といわれます。
「キリンソウ」と「常緑キリンソウ」何が異なるか。
このあたりから説明したいと思います。
鳥取県で開発された奇跡の植物 常緑キリンソウ
「キリンソウ」と「常緑キリンソウ」の最も大きい違いは次の点です。
- キリンソウ:冬には葉っぱを落として枯れた状態になります。
- 常緑キリンソウ:冬でも青々とした緑の状態を保ちます。
なんだ、それだけ?と思う方もいるかもしれません。
ですが、緑化の分野では「冬も緑の葉っぱなのか、それとも枯れてしまうのか」というのは、景観的にも、環境への負荷軽減の観点からも非常に大きな違いなのです。
常緑キリンソウ は種苗法で保護された「特許を取得」した植物
キリンソウと常緑キリンソウの違いは、「常緑か常緑でないか」という点です。
この点で常緑キリンソウは植物の特許を取得しています。
この常緑キリンソウは鳥取県の種苗会社、㈱フジタが平成19年に種苗登録を完了しています。登録名は 『トットリフジタ1号』登録番号15866号『トットリフジタ2号』登録番号15867号 の2品種を登録しています。
常緑キリンソウは、特許で保護されている植物なので、勝手に株分けして増やしたり、勝手に販売したりすることはできません。
常緑キリンソウ がなぜ奇跡の植物と呼ばれる?
常緑キリンソウが「奇跡の植物」として紹介されたのは、とんでもない生命力の強さにあります。
日本の在来のキリンソウは、潮風の強い海岸で岩の上にわずかに貯まった土の上でも元気に生育することができます。
(株)フジタが開発した常緑キリンソウも、このとんでもない生命力の強さを引き継いでいます。
水やりをしなくても生きていける常緑キリンソウ
常緑キリンソウとにかく乾燥に強いです。
人為的な水やりをしなくても生きていけます。
ひと月に一度くらいの雨水だけで生きていけるのです。
したがって屋上緑化では必須の自動潅水装置など必要ありません。
この「奇跡的な生命力の強さ」を生かして、今までは緑化は難しいとされてきた場所でも、簡単なシステムで緑化することが可能になりました。
屋上緑化に最適な植物 常緑キリンソウ
もともと常緑キリンソウは、その強い生命力を生かして、屋上緑化の分野で注目を浴びた植物です。
ここからは少し「屋上緑化」について触れ、どうして常緑キリンソウが屋上緑化に最適な植物とされるのか、紹介したいと思います。
屋上緑化において植物に求められる能力とは
屋上を緑化する際に、もっとも配慮しなければいけない事項は、「その屋上はどのくらいの重さに耐えられるか」という点です。
建物の屋上が耐えられる重さについては、建築基準法で決められていて、その重さを越えるような場合、緑化をすることはできません。
なぜなら屋上が重さに耐えられず、ひび割れなどの損傷を生じる可能性があるためです。
ひび割れなどが生じると雨漏りの原因となります。
従って屋上に緑化を持ち込もうとする際には、「どのくらい軽量で屋上を緑化することができるか」について、屋上緑化の業者は「しのぎ」を競っています。
屋上緑化でセダムがうまくいかなかったわけ
セダムという多肉植物をご存じでしょうか。
多肉植物であるセダムは、非常に乾燥に強く、わずかな土があると生存することができます。
この乾燥に強いという性質が着目され、屋上緑化が注目され始めた当初、薄い土にセダムを生やして緑化する手法が盛んに採用されました。
しかし、このセダム工法はうまくいきませんでした。
セダムは確かに乾燥に強く、一か月くらい雨が降らなくても生きていることができます。
ですが、「高温多湿」の環境には非常に弱かったのです。
日本の梅雨時期は、このセダムの苦手な「高温多湿」な環境に陥ります。
この結果、屋上緑化に採用されたセダムは、各地で「梅雨時期に枯れてしまう」という状態が各地で起こり、次第にセダムによる「薄層緑化(わずかな土で生育させる緑化工法)」は、下火になっていきました。